「タンパク質は1日にどれくらいとればいいの?」という疑問に、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」(国が定める、栄養のとり方の目安)と、研究をまとめた論文をもとに答えます。食品の量は文部科学省の「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」の数値で計算しました。
「推奨量」と「目標量」の違い
食事摂取基準では、タンパク質についていくつかの「ものさし」が決められています。この記事で主に使うのは次の3つです[1]。
- 推定平均必要量:その年代・性別の人の半分が「足りている」と判断される量
- 推奨量:その年代・性別のほとんどの人が足りると考えられる量。推定平均必要量に1.25をかけて決められています
- 目標量:生活習慣病やフレイル(年をとって心身の力が弱った状態)を防ぐことを目的にした量。食事全体のエネルギー(カロリー)のうち何%をタンパク質からとるか、で示されます
参考 報告書では、推奨量と目標量はどちらか一方を満たせばよいのではなく、推奨量を満たしたうえで目標量も満たすことが望ましいとされています[1]。なお、タンパク質には「これ以上とると健康を害する」という上限(耐容上限量)は決められていません。理由は後の「とりすぎ」の章で説明します。
年代・性別の目安(表)
参考 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」のタンパク質の基準は次のとおりです[1]。1日あたりのグラム数で、目標量だけはエネルギーに占める割合(%)です。
| 年齢 | 男性 推定平均必要量 | 男性 推奨量 | 女性 推定平均必要量 | 女性 推奨量 | 目標量(男女共通) |
|---|---|---|---|---|---|
| 1〜2歳 | 15g | 20g | 15g | 20g | 13〜20% |
| 3〜5歳 | 20g | 25g | 20g | 25g | 13〜20% |
| 6〜7歳 | 25g | 30g | 25g | 30g | 13〜20% |
| 8〜9歳 | 30g | 40g | 30g | 40g | 13〜20% |
| 10〜11歳 | 40g | 45g | 40g | 50g | 13〜20% |
| 12〜14歳 | 50g | 60g | 45g | 55g | 13〜20% |
| 15〜17歳 | 50g | 65g | 45g | 55g | 13〜20% |
| 18〜29歳 | 50g | 65g | 40g | 50g | 13〜20% |
| 30〜49歳 | 50g | 65g | 40g | 50g | 13〜20% |
| 50〜64歳 | 50g | 65g | 40g | 50g | 14〜20% |
| 65〜74歳 | 50g | 60g | 40g | 50g | 15〜20% |
| 75歳以上 | 50g | 60g | 40g | 50g | 15〜20% |
妊娠中・授乳中は、上の量に上乗せ(付加量)が決められています。推奨量の上乗せは、妊娠初期+0g、中期+5g、後期+25g、授乳中+20gです[1][2](妊娠後期の推奨量の上乗せは、報告書の正誤表で「+20g」から「+25g」に訂正されています)。目標量は、妊娠初期・中期が13〜20%、妊娠後期と授乳中が15〜20%です。0〜11か月の乳児は「目安量」(0〜5か月10g、6〜8か月15g、9〜11か月25g)で示されています。
表の見方のポイントは2つです。1つ目は、大人の推奨量は年をとっても大きくは減らないこと(男性は64歳まで65g、65歳以上で60g)。2つ目は、高齢になるほど目標量の下限(13%→14%→15%)が引き上げられていることです。食べる量が減りがちな年代ほど、食事に占めるタンパク質の割合を意識するように、という考え方です。
体重1kgあたりで考える
表の数字は「その年代の標準的な体格(参照体重)」をもとにしています。体格が大きい人・小さい人は、体重1kgあたりで考えるとわかりやすくなります。
参考 報告書では、質のよい動物性タンパク質で体のタンパク質を保つのに必要な量を、1歳以上で体重1kgあたり1日0.66gとしています。ふだんの食事(いろいろな食品が混ざった食事)では体に利用される割合を90%とみて、大人では0.66÷0.9=0.73g/kg。これに体重をかけたものが推定平均必要量の土台になり、推奨量はさらに1.25倍されます[1]。
ここから計算すると、大人の推奨量は体重1kgあたりおよそ0.9g(0.73×1.25≒0.91)になります。たとえば体重60kgの人なら約55g、体重70kgの人なら約64gが、推奨量の考え方にそった1日の量の目安です(あくまで計算上の目安で、表の数値は年代ごとに調整されています)。
筋トレをする人はどれくらい?
根拠:強い 筋トレ(レジスタンス運動)とタンパク質の補給について、ランダム化比較試験(くじ引きのように参加者を分けて比べる試験)49件・1,863人を合わせて分析した研究があります[3]。6週間以上の筋トレ中にタンパク質を補給したグループでは、補給しなかったグループに比べて、筋力(1回持ち上げられる最大の重さ)が平均2.49kg、除脂肪量(体重から脂肪を除いた量)が平均0.30kg多く増えたと報告されています。
同じ研究では、1日のタンパク質の合計が体重1kgあたり約1.62gを超えると、それ以上増やしても除脂肪量の増え方は大きくならなかったとされています。また、年齢が上がるほど補給の上乗せ分は小さくなり、筋トレの経験がある人ほど大きかったと報告されています[3]。
つまり、「たくさんとるほど筋肉がつく」わけではなく、体重1kgあたり1.6g前後がひとつの区切りと読み取れます。食事摂取基準の報告書もこの研究を引用し、上限なくタンパク質をとることが健康の増進に役立つわけではない点に注意が必要だとしています[1]。なお、この分析の著者の一人は乳業団体から研究資金などを受けたことを開示しています。
また、筋肉の量を増やす中心はあくまで筋トレそのものです。タンパク質は、その効果を後押しする材料の役割にとどまります。
高齢者とフレイル予防
年をとると筋肉が減って体の力が落ちる「サルコペニア」や、心身が弱る「フレイル」が問題になります。タンパク質不足はこれらに関係すると考えられています。
参考 食事摂取基準の報告書は、フレイルを防ぐための量を正確に決めるのは難しいとしつつ、高齢者は推奨量より多め(体重1kgあたり1日1.2g以上)にとるほうが、フレイルやサルコペニアの発症を防げる可能性があると述べています。これを根拠に、65歳以上の目標量の下限を15%に引き上げています[1]。一方で、タンパク質の量とフレイルの関係を調べた観察研究の結果は一致しておらず、研究の数・質ともにまだ十分ではないとも書かれています。
根拠:中くらい 70歳を超える男性29人を対象にしたランダム化比較試験では、10週間、体重1kgあたり1日0.8gの食事をとったグループでは手足の筋肉量が減った一方、1.6gのグループでは保たれたと報告されています[4]。ただし人数が少なく期間も短い試験なので、これだけで「誰にでも当てはまる」とは言えません。
なお報告書には、体が小さい人や、75歳以上で活動量が大きく落ちた人などでは、目標量の下限が推奨量を下回る場合があるが、その場合も推奨量以上をとることが望ましい、という注記があります[1]。
1食あたりの目安と食品の例
1日の推奨量を3食で割ると、男性(18〜64歳、65g)なら1食あたり約22g、女性(50g)なら約17gです(単純な割り算です)。朝食がパンとコーヒーだけ、のように1食が少ないと、ほかの2食で多くとる必要が出てきます。
主な食品のタンパク質の量は次のとおりです(「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」、可食部100gあたり)[5]。
| 食品(成分表の名前) | 100gあたり | 計算例 |
|---|---|---|
| 鶏むね肉(若どり・皮なし・生) | 23.3g | 80gで約18.6g |
| 鮭(しろさけ・生) | 18.9g | 80gで約15.1g |
| 納豆(糸引き納豆) | 16.5g | 40gで約6.6g |
| 卵(鶏卵・全卵・生) | 12.2g | 50gで約6.1g |
| 木綿豆腐 | 7.0g | 150gで約10.5g |
| 牛乳(普通牛乳) | 3.3g | 200gで約6.6g |
| ヨーグルト(全脂無糖) | 3.3g | 100gで3.3g |
| ごはん(精白米・うるち米) | 2.0g | 150gで約3.0g |
計算例のグラム数は説明のための仮の量で、商品や料理によって1食の量は違います。肉や魚は生の重さでの値なので、調理後の重さとは一致しません。
組み合わせの例として、朝に「ごはん150g+納豆40g+卵50g」なら約15.7g、昼か夜に「鶏むね肉80g+ごはん150g+牛乳200g」なら約28.2gになります。肉・魚・卵・大豆製品・乳製品を毎食どれか1つ入れると、推奨量に近づけやすくなります。
食事で足りないとき
食が細い、忙しくて食事が偏る、などの理由で食事だけでは足りない場合、粉末のプロテイン(タンパク質を多く含む粉末食品)や、タンパク質を強化した食品を使うのもひとつの選択肢です。前の章の筋トレの研究も、食事に「補給」を加えた試験をまとめたものです[3]。
使う場合は、次の点を意識するとよいでしょう。
- まずは食事で。プロテインは「足りない分を補う」位置づけと考える
- パッケージの栄養成分表示で1回分のタンパク質量とエネルギーを確かめ、食事と合わせた1日の合計で考える
- プロテインもエネルギー(カロリー)を含むため、体重を減らす目的のものではありません
- 腎臓の病気などで食事制限を受けている人は、使う前に主治医に相談する
参考 食事摂取基準の報告書は、サプリメントなどで通常の食事の範囲を大きく超えた量をとった研究が多く、そのため基準づくりに使いにくかったと述べています[1]。研究で見られた結果を、そのまま「多くとるほどよい」と読みかえないことが大切です。
とりすぎ・注意が必要な人
参考 タンパク質に耐容上限量(健康を害さない上限)が決められていないのは、「いくらとっても安全」だからではなく、上限を決めるだけの明確な根拠がまだないためです。報告書は、エネルギーの20〜23%前後のタンパク質摂取について、大人では体の代謝の変化、高齢者では腎臓の働きへの好ましくない影響の可能性があり検証すべき課題だとして、目標量の上限を20%としています[1]。
根拠:強い 腎臓の病気がない健康な大人を対象にした試験28件・1,358人のデータをまとめた分析では、タンパク質の多い食事(体重1kgあたり1.5g以上、エネルギーの20%以上、または1日100g以上)でも、腎臓のろ過の働き(GFR)の変化に、通常の食事との差は見られなかったと報告されています[6]。ただしこれは健康な人の、比較的短い期間の結果です。
根拠:強い 一方、慢性腎臓病(CKD)の人では話が変わります。食事摂取基準でも、CKDの食事療法は腎臓を守るためのタンパク質制限が中心とされています[1]。糖尿病のないCKDの大人を対象にしたコクランレビュー(信頼性の高い研究のまとめ)では、病気が進んだ段階(ステージ4〜5)の人で、ごく低いタンパク質の食事が末期腎不全(透析などが必要な状態)への進行を減らす可能性が高いと報告されています[7]。こうした制限は医師・管理栄養士の管理のもとで行うものです。
つまり、腎臓病・糖尿病などで食事の指導を受けている人は、この記事の一般的な目安ではなく、主治医の指示を優先してください。食事摂取基準も、特定の病気の管理のためにタンパク質の制限や多めの摂取が必要な場合は、目標量よりそちらを優先すべきとしています[1]。
医療機関に相談したい目安
- 腎臓病・糖尿病などで食事制限(タンパク質や塩分、エネルギーなど)を受けている人は、タンパク質を増やす前に主治医に相談する
- 健康診断で尿たんぱくや腎機能(eGFR・クレアチニン)の異常を指摘された
- 食欲が落ちて、意図しないのに体重が減ってきた(特に高齢の方)
- 歩くのが遅くなった、握力が落ちた、疲れやすいなど、体の力の衰えが気になる
- 妊娠中・授乳中で、食事の量や内容に不安がある
出典・注意書き
基準日:2026年10月時点
- 厚生労働省.「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 各論 1-2 たんぱく質. 2024. https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001316462.pdf(報告書の一覧:https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html)
- 厚生労働省.「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 正誤表(令和7年3月25日). https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001316480.pdf
- Morton RW, et al. A systematic review, meta-analysis and meta-regression of the effect of protein supplementation on resistance training-induced gains in muscle mass and strength in healthy adults. Br J Sports Med. 2018. PMID: 28698222 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28698222/
- Mitchell CJ, et al. The effects of dietary protein intake on appendicular lean mass and muscle function in elderly men: a 10-wk randomized controlled trial. Am J Clin Nutr. 2017. PMID: 29092886 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29092886/
- 文部科学省.「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」食品成分データベース(鶏卵 全卵 生/若どり むね 皮なし 生/しろさけ 生/糸引き納豆/木綿豆腐/普通牛乳/ヨーグルト 全脂無糖/水稲めし 精白米 うるち米). https://fooddb.mext.go.jp/
- Devries MC, et al. Changes in Kidney Function Do Not Differ between Healthy Adults Consuming Higher- Compared with Lower- or Normal-Protein Diets: A Systematic Review and Meta-Analysis. J Nutr. 2018. PMID: 30383278 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30383278/
- Hahn D, et al. Low protein diets for non-diabetic adults with chronic kidney disease. Cochrane Database Syst Rev. 2020. PMID: 33118160 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33118160/
根拠の強さの表示:強い=複数の研究をまとめた分析・診療ガイドライン/中くらい=ランダム化比較試験/弱い=観察研究/参考=公的資料の目安・専門家の意見など。詳しくはこちら
ご注意
- この記事は一般的な健康情報で、診断や治療に代わるものではありません。持病のある方・治療中の方・妊娠中の方は、主治医にご相談ください。
- 食事摂取基準の数値は、健康な人を対象にした「集団の目安」です。一人ひとりに必要な量は、体格・活動量・持病などによって変わります。
- 食品の成分値は成分表の代表値で、実際の食品や商品によって異なります。